サッカー界の至宝、記録にも記憶にも残る希代のレフティーが引退。
元日本代表で現在J2・横浜FCのMF中村俊輔選手が今季での引退を決断しました。
18日に引退が正式発表。
度重なる怪我を乗り越えて、長い間現役の第一線で活躍し続けてきた中村選手。
2018年以降は、負傷だけではなく、万全のコンディションでも公式戦出場時間は激減していました。
「監督業をやりたいと考えているが、引退を決意する理由は人それぞれ」として、指導する立場への挑戦を視野に入れながらも現役選手としての挑戦を継続してきた中村選手。
そんな彼がついに引退を決意し、後の道として挑戦する「指導者」という道。
既にB級コーチライセンスを取得済みの彼がどのような指導者になっていくのか。
今回の記事では、指導の指標となる人物とともに考察していきたいと思います。
この記事でわかること
- 中村俊輔選手の指導者論
- 中村俊輔選手の目指す指導者像
中村俊輔選手の指導者論
チーターさんに解説してもらいます。
チーターさんお願いします!
中村選手自身が過ごした現役時代も26年の月日が流れ、その間に日本代表はワールドカップに6度出場。
以前の中村選手のように欧州のトップリーグで活躍する日本人選手が普通にいます。高校卒業後にJリーグではなく海を渡ってプロになるケースすらある状態です。
現役サッカー選手として技術を錬成し、常にサッカーを俯瞰し続けてきた中村俊輔選手。トッププロ選手でありながら指導者としての目線も強く意識していました。
現役時代に急激に時代の変化が訪れましたが、中村選手はそんなサッカー界でどのような指導者となっていくのでしょうか。
中村選手が以前自身の指導者論についてこう語っていました。
「いろんなチームでいろんな経験をさせてもらったから、いろんなことが見えてくるじゃん? こういうタイミングで指導者がこの言葉をかけると選手は覚醒するんだなとか、逆に何も言わないほうがいいんだなとか。ほとんど後者のパターンだけどね。選手自身で考えてやったほうが、特に若いヤツは爆発的に伸びたりするから。
監督は自分に結果がのしかかってくるから言っちゃうけど、俺なら『ああやれ』『こうやれ』とは言わない。『こういうエリアでこうやると、もっとよくなるんじゃない?』とかは言うよ。そういうのは長くやって、いろんなものを見てきたからこそ感じるよね。今は、ため込んでいるって感じ」
出典「web Sportiva」
自身が長く現役や多様なチームを経験されてきたからこそ、指導者についても勉強できたのでしょうね。
中村選手の”盟友”元日本代表の小野伸二選手(J1・北海道コンサドーレ札幌MF)も中村選手についてこう語っています。
「俊君は本当にサッカーが大好きだから、サッカーの見方や、どう展開するのかの考え方を話していて勉強になる。(やりたい)サッカーは一緒なんだけど、見方が違ったので凄いな、と」
出典「スポニチアネックス」
中村選手はB級コーチライセンスなのでアマチュアの方々の指導が主となりますが、培ってきた経験や視点、それに伴う思考をもとに指導してもらえると、個人差はありますが、メキメキ上達していきそうですね。
中村俊輔選手の目指す指導者像
選手としてだけでなく様々な視点を持つ中村選手。
そんな中村選手が目指す指導者・尊敬している指導者の人についてみていきます。
樋口靖洋監督
中村選手の中学時代、マリノユースを率いていた樋口靖洋監督(現:ヴィアティン三重監督)。
「身長なんていつか伸びるから、筋トレなんかしなくていい。それより、こういう股抜きがあるんだけどさ……」
と身体的にまだ周囲に追いついていなかった中学時代の中村選手に対して、テクニックの重要性を説き、選手としての先を見ていた樋口監督。
中村選手自身もこの指導のおかげで様々なテクニックの習得につながったとされています。
「樋口さん、褒めちぎってくれるのがデカかったよね。プロになってからもそうだけど、俺、何も言われないタイプだったから。何気ない言葉でパって道が開ける時があるから、俺もそういう指導者になりたい気持ちがあるよね」
出典「web Sportiva」
中学時代の恩師に憧れを持ち続けているなんて、よっぽどいい監督(指導)だったんだと思います。ひとりひとりの個性や先を見ることは重要ですね。
名波浩監督
元ジュビロ磐田監督の名波浩監督(現:松本山雅FC監督)。
「個のための個」ではなく、あくまで「組織のための個」として選手を伸ばすような指導方針で、選手同士がお互いに強みを引き出せるようにいろんな選手の「取扱説明書」を持つことを重視。
中村選手はジュビロ磐田に移籍した時のインタビューで、
「名波さんの起用法やメンタル指導も見てみたい」と、名波監督の指導法に興味を示していました。
名波監督は「一体感」をテーマにジュビロ磐田を J2からJ1に押しあげた腕を持ち、何より選手ひとりひとりに対して寄り添った指導方法を展開しました。
中村選手も磐田時代、実施に名波監督の指導を目の当たりにして、
「俺も含めて、名波さんがどう選手を扱っているのかはすごく勉強になった。ヨーロッパの監督は成績次第でクビがかかっているからか、自分の戦術に選手をはめていくけれど、名波さんは余裕があるから、選手ひとりひとりを育てようとしている。
だから個別に選手と話して、選手それぞれによいやり方を選んでいると感じる。この間も(上田)康太と話し込んでいたから、あとで『何を話していたの』と聞いた。今日も(上原)力也を右で使った。そのあとには昌也も。そういう経験は今後、代表へ行ったり、違う監督のもとでプレーしたときに大きい。わずか10分でもね。名波さんは素晴らしい。ぎりぎりのプレッシャーと責任感の負わせ方が上手いなと思う。そんななかで(川辺)駿や力也が成長する姿を見られたのは、面白かった」
出典「NUMBER WEB」
と、名波監督と選手との関係性について注目していました。
名波監督は現在J3・松本山雅FC監督として奮闘されていますが、名波監督の指導方法を吸収した中村選手の育てた選手が対戦する日も遠くないかもしれませんね。
落合博満監督
言わずと知れた元プロ野球中日ドラゴンズ監督の落合博満元監督。
選手としては、日本人選手として初の1億円プレイヤーとなり、
監督としては中日ドラゴンズをリーグ優勝(4回)・日本シリーズ優勝(1回)に導きました。
現在はYouTubeで「落合博満のオレ流チャンネル」を発信しています。
中村選手は落合元監督について
「落合さんは批判されるし、なかには嫌う選手もいるかもしれないけど、”勝つ監督”なんだよね。選手だけでなく、記者に対しても『お前、毎日来ないのに、何で書けるんだよ?』とか、本当に細かいところまで見ている。俺もそっち系だな。
選手をよく見ていたら、顔つきからメンタリティ、やる気があるとかわかるじゃん? でも、それで『あいつ、声出してねえな』『やる気ねえな』とアラを探すのではなく、そこからどうしていくかだよね」
出典「web Sportiva」
と語っていて、自身と重ね合わせたうえで、指導者としての「理想」としています。
野球とサッカーで畑違いではありますが、「指導」という名目は野球・サッカーに関わらず、すべてのスポーツに共通しています。
指導者として、学ぶためにいろんな視野を身につけることが重要だと認識しているからこそ、他競技の監督の分析にもつながるんですね。
まとめ
中村選手は、サッカー人生において選手から指導者へ転身することが1つの区切りではないとしていますが、それは中村選手自身で長期目線で俯瞰して目標設定をしているからこそできる思考です。
スポーツ心理士の松山林太郎氏は、一般的には「現役時代から以下の4つの視点を認識しておくと良い」とされています。
- 長期的なスポーツキャリアの計画を立てる
- 幅広いアイデンティティを持つ
- 引退をターニングポイントとする
- ソーシャル(周囲)のサポートを受ける
現役を退く心理的な負担は、長期的な目標を持っている中村選手でも相当あったと思います。
それでも最後の試合までピッチに立ち続けたその姿は、現役最終試合の後の機内アナウンスでも粋な労いの言葉がありましたが、みんなに感動を与えてくれたのは間違いないですね。
心から感謝とお礼を言わせていただきます。
中村選手お疲れ様でした。スーパープレイの数々と夢をありがとうございました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。